AERA「現代の肖像」に、勅使河原茜さんを書きました。

本来ならこれは、1週間前にお知らせすることだったのですが、

もう今日で切り替わってしまいますが、

5月29日発売の「AERA」(朝日新聞出版)<現代の肖像>に、

いけばな草月流第四代家元、勅使河原茜さんを書きました。

 

<現代の肖像>はこれで、11人目だと思います。

チームを組んだ、カメラマンの葛西亜理沙さんとは、

萬田久子さんから始まり、LiLiCoさん、中脇初枝さん、

そして昨年の遠藤憲一さんに続き、5人目となります。

 

<現代の肖像>はご本人のロングインタビューを3回、

周辺の方に5人ほど話を聞き、かつ、仕事の現場密着と、

とても時間と手間のかかる取材を通して完成する、

対象の人間を深彫りする人物ルポです。

 

いつも多大なプレッシャーを抱え、

暗中模索状態から、取材はスタートします。

今回の勅使河原茜さんは、草月流の頂点に立つ家元です。

その方を、いけばなの「い」の字も知らない私が、

どう迫れるのかって、誰もが不安に思ったかもしれません。

実際、冷静にみれば、無茶なことだったのといえるでしょう。

 

でもわからないということは、「わかってる」と思っているより、

はるかに強力な<武器>なのかもしれません。

何も知らないのですから、真摯にすべてに向き合うことしか、

私にできることはないわけですから。

創流90周年記念個展を、制作段階から見せていただいたのですが、

そこには全く未知の、立ち会ったことがない世界がありました。

打ちのめされるほどの衝撃でした。あまりの見事さ、壮大さ……。

これまで抱いていた「いけばな」の概念が、一瞬に吹き飛ばされてしまうという。

こういうことこそ、取材の喜びなのかもしれません。

もちろん、目の前にあるものすごい世界を言葉でどう描くのかに思い至ると、

尻込みしそうになるわけですが……。

逃げ出したくもなるわけです。もちろん、逃げるわけにはいかないから、

無茶であっても、ぶち当たっていくしかありません。

 

植物は生き物であり、同じものは一つとしてありません。

だから、ルーティンという概念すらそこには存在しない。

しかも、草月は「形式」美を拒否し、

道なき道を切り開くのが、そのスピリット。

花と向き合って、その花がどうすればきれいにみえるのか、

喜んでくれるのか、集中していく中で、

思いもかけない造形や美が生まれる。

家元の手による、文字通りの”ライブ”を見せていただいた時、

花に向き合うということは、魂を磨く作業に思えました。

 

ありがたいことに、草月流の方々の評判もいいらしく、

家元の近くにいる方たちから、知っている話なのにとても新鮮で引き込まれたと、

うれしい感想をいただき、心より胸を撫でおろしたところです。

とんでもないプレッシャーから、これでようやく解放されました。

いつもそうですが、葛西さんの写真が抜群に素晴らしいのです。

写真の方が先にアップしますから、

私はいつも、葛西さんの仕事に敬意を表して書き始めます。

 

今回は校了日がたまたま、大分県での講演会と重なって、

最後の取材の4日後が〆切という、ものすごくタイトなスケジュールでした。

それでも、自分が見たもの、感じたものをありのまま伝えようと……。

なんとかなって、本当によかった!

<現代の肖像>という人物ルポは苦しいけれど、

何か、私を鍛えてくれるような仕事だと思います。

 

そしてこの仕事の後、目の前から宿題が消えました。

多分、原発事故以来だから、6年ぶりのことだと思います。

それまでずっと私の肩には、大事な仕事が乗りかかっていました。

仕事以外で家を空けることもないほど、純粋なお休みもなく。

それは、とても苦しい毎日でした。

 

田奈高校の原稿はかなり赤字が入るらしく、

でも今は、まだ嵐の前の静けさですし、

次のテーマのために取材先リストを作るという、

新たなスタートを前にした、ちょっとのどかな時間が流れています。

 

90周年個展のほんの一部。草月会館にある、イサムノグチの石庭が巨大ないけばな空間に。

 

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黒川祥子

黒川祥子

東京女子大学史学科卒業。弁護士秘書、業界紙記者を経てフリーに。
主に家族や子どもの問題を中心に、取 材・執筆活動を行う。
2013年、『誕生日を知らない女の子 虐待~その後の子どもたち』(集英社)で、第11 回開高健ノンフィクション賞受賞。
他の著作に『子宮頸がんワクチン、副反応と闘う少女とその母たち』(集英 社)、橘由歩の筆名で『身内の犯行』(新潮社)ほか。
息子2人をもつシングルマザー。

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